心の中の小さな本棚

オリジナル小説と日記を保管する本棚です

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パパは先生☆父と息子~碧宮家の場合~☆1

パパは先生の番外編です。

本編は回想シーン以外は基本的に悠梨亜は中学1年生です。

番外編では小さい頃の話だったり、パパの若いころの話だったりと時間軸が前後します。

番外編と言っておりますが、実は本編を書いている途中でパパは先生の短編が思いついただけだったりもします。


*************************************************************************

「よく頑張ったな、跡継ぎができた。」



幸希は生まれたばかりの我が子を抱き上げた。
途端にそれまでキリリとひきしまっていた顔がほころんだ。
「可愛いなぁ、おまえは・・・よく私の子供として生まれてきてくれたな。そうだ!おまえの名前はな、碧宮・・」
「碧宮幸希Jrはやめてくださいね。」
「・・・・・・。」


妻・紗莉奈はにっこり微笑みながら夫に釘をさした。
幸希は顔を赤らめてゴホンッとひとつ咳払いをした。
「そ・・そんな訳なかろう・・・この子の名前はな・・そうだなぁ・・・・・」
実は幸希は息子にJrとつけたいと密かに考えていた。
海外の取引仲間の多くは跡継ぎとして生まれてきた子供にJrと名付けていたからだ。
(やはり日本でJrは無理があったか・・・。)


「この子の名前はな・・そうだな、ゆうきだ。」
「ゆうき・・・ですか。フフフ・・」
「なんだその笑いは。ちゃんとした名前ではないか!」
「ええ、そうですね。」
紗莉奈はクスクス笑った。


以前、夫にこんな話を聞いたことがある。
幸希という名前はいつもある名前と見間違われてきたという。
その名前が「ゆうき」だ。
一見読み違えそうにない名前だが、カタカナにするとよくわかる。
「コウキ」に「ユウキ」、そっくりだ。


我が子を抱いてにこにこしている夫を見て紗莉奈は微笑んだ。
(よほど自分の名前に近い名前にしたいのね~・・・。)
「それで?ゆうきってどんな漢字にするんですか?」
「ゆうきのきはもちろん私の字と同じ希望の希だ。ゆうはおまえにまかせる、おまえの好きな字にするといい。」
「そうですか・・・わかりましたわ、考えてみます。」
紗莉奈は頭の中にゆうという漢字をたくさん思い浮かべて考えた。


「どうだ?決まりそうか?」
「ええ・・・ゆうっていっぱい漢字あるのね・・・どうにか5つまで絞ったんですけど・・・あなたも一緒に考えてもらえませんか?名前は一生その子についてまわるものですから、いい加減に決めたくないんです。」
「そうだな。では一緒に決めようではないか。その5つというのはどんな字だ?」
「この5つなんですけど・・・」


紗莉奈はさらさらとノートに5つの字を書き出した。
“優希・雄希・悠希・湧希・侑希”
「ほう・・・これはなかなか難しいな・・どれも申し分ない良い字だ。」
「さっき辞書で調べたらゆうっていう漢字は何十個もあるんです、そこから良さそうな字を選んでここまで絞ったんですけど・・・どうしましょう。」
「う~ん、優しい子か、男らしい子か、悠々自適な子か、湧き水のようにきれいな心の子か・・・ん?5つ目は思い浮かばんな、これは除外だ。」
「あらあら、よく字を見ただけで思いつきますね、でも4つ目も結構無理矢理こじつけましたね、これも除外しましょうか。」
「こじつけで悪かったな!ん~・・・私の跡継ぎということは将来人の上に立つということだ。人の上に立つというのは楽なことではない。悠々自適な考えを持てる者の方がこれからの社会でやっていけるかもしれんな・・・よしっ悠希に決めたぞ!」



こうして2人の間に生まれた男の子は悠希と名付けられた。



幸希は悠希を可愛がった。暇さえあれば息子の相手をしていた。
仕事を終えてリビングに行くと悠希が1人で積み木遊びをしているところだった。
無心に積み木で遊んでいる息子を見て幸希は仕事の疲れも忘れてカメラを手にした。

「あら、また写真ですか?」
「またとは何だ、またとは。子供の成長は早いんだぞ?今撮らなくていつ撮るんだ?」
言い返しながらもシャッターを押す手は止めない。
「あまり写真ばかり撮ってると悠希に嫌われますよ?」
「え?」
「お父さんは写真ばかり撮って僕と遊んでくれないって思ってるかもしれませんよ?」
「そんなはずは・・・」

慌ててカメラを下ろして息子の顔を見る。
悠希は積み木遊びの手を止めて父親を見上げていた。
その目は「お父さん遊んで!遊んで!」とキラキラしている。


「よーし、こっちおいで。お父さんが絵本を読んであげよう。」
幸希は悠希を抱き上げると子供部屋へ向かった。
子供部屋の大きな本棚にはたくさんの絵本が入っている。
悠希が生まれてから毎晩のように幸希は絵本を買ってきた。
「まだ字も読めない悠希に早すぎます!」と紗莉奈に怒られながらも幸希はおみやげを渡したときの悠希の笑顔を見るために毎日絵本を買ってきた。
そして悠希のために時間さえあれば絵本を読み聞かせていた。



「まだ悠希にはわからないと思いますよ?」
「そんなことない、悠希は周りの子より話し始めたのが早かっただろ?それは毎日読み聞かせしていたからだ。子供は毎日成長しているんだ。一秒たりとも無駄にはできない。子育てに早すぎるということはないんだ。なあ、悠希?」
「あ~・・・あっ・・おと~しゃん!」
悠希は嬉しそうに足をパタパタ動かしている。
「おお上手に言えるようになってきたな、そうだよ、お父さんだよ~!そうだ、絵本の前に先にお風呂に入ってこよう。」
悠希をだっこして部屋を出ていく夫の後ろ姿を見て紗莉奈は苦笑した。
(あの人があんなに子煩悩だと思わなかったわ・・・会社の人が見たら驚くわね。)



悠希が大きくなっても幸希の愛情が変わることはなかった。
変わることはなかったのだが、すべてが息子に伝わっているわけではなかった。
「悠希、デパートに行くぞ。」
「うん!」
5歳の息子を連れてデパートに行ったときのこと。
「悠希、本を買ってあげるから選びなさい。」
「・・・僕・・いらない。」
「どうした?気に入った本がないのか?」
「僕ね、ご本じゃなくておもちゃが欲しいの。」
悠希は上目遣いで父親を見つめた。



「おもちゃ?おもちゃなんて家にたくさんあるじゃないか。」
「違うの~!積み木とかパズルじゃなくて怪獣とかラジコンとか欲しいの~!」
「そんなもの何の役に立つんだ?」
「う~・・・だって・・持ってないと仲間に入れてくれないんだもん・・・。」
「怪獣を持ってないと仲間はずれにするような子と遊ぶ必要はない!!大体遊んでいる暇があるのか?おまえは習い事いっぱいやっているだろ?」
「だって・・僕もみんなと一緒に遊びたい・・・」


俯く悠希の前にかがみ込んだ幸希は息子に語りかけた。
「悠希、おまえは大きくなったらお父さんの会社の社長になるんだ。社長になるためには小さいうちからたくさんお勉強しないといけないんだよ。今の悠希に必要なものは怪獣でもラジコンでもない、本だ。」
「・・ご本・・・?」
「そうだ。物語でも伝記でも図鑑でも何でも良い。たくさん本を読んで自分の世界を広げるんだ。怪獣なんかで遊ぶよりよっぽど楽しいぞ。」
「でも・・・」
「悠希、お父さんの言うことが聞けないの?いつからそんな悪い子になってしまったんだ?」
「・・・悪い子?」

悠希は悪い子という言葉にビクッと反応した。
「そうだよ、お父さんの言うことを聞けない子は悪い子だ。悠希は悪い子なのか?違うだろ?」
「・・・・・・。」
悠希は考えた、ここで『僕、悪い子でも良いから怪獣が欲しいの!』って言ったら欲しかったおもちゃを買ってもらえるかもしれない。でもその前にいっぱいお尻を叩かれるかもしれない。悠希は返事に迷っていた。
「悠希?・・・・・・お父さんは悪い子は嫌いだよ?」
「悪い子・・・・・嫌い?」
「ああ、お父さんは悪い子は大嫌いだよ。悠希はお父さんが嫌いな悪い子なのか?違うよね?悠希はお父さんの言うことをちゃんと聞けるいい子だよね?」
「・・うん・・・。」
「いい子の悠希は怪獣なんていらないよな?」
「・・・・・うん・・。」
「よーし、いい子だ。おいで、いい子の悠希には欲しい本なんでも買ってやるからな。」


お父さんに抱き上げられた悠希はぎゅっとお父さんの肩に抱きついて顔をふせた。
(僕・・・悪い子じゃないもん・・・お父さんに嫌われたくないもん・・)
本屋で幸希はたくさんの本を購入した。
音の出る絵本、飛び出す絵本、図鑑に童話を少々・・・全て息子のために選んだものだった。


「そうだ、パズル買っていこうか。お父さんと一緒にやろう。」
「うん!」
悠希がキャラクターの図柄のパズルに目をひかれている横で幸希は1つのパズルを手に取っていた。
「これがいいな。」
「それ何の絵?」
「世界地図だよ。完成したら悠希の部屋に飾ろうな。」
「・・・うん・・」



悠希はしょぼんと父の後についておもちゃ屋を後にした。
(おとうさん何でおもちゃ買ってくれないんだろ・・・お友達のお父さんは一緒にプラモ作ってくれるって言ってたのに・・・)


毎日おみやげを買ってきてくれるお父さんが大好きだった。
「おかえりなさい」って抱きつくと「いい子にしていたか?」って頭を撫でてくれた。
「うん!」って頷くと「そうか、ほらおみやげだぞ」って紙包みを渡してくれる。
その紙包みから出てくるのはいつも本ばかり、おもちゃが出てきたことなんて一度もない。


それが普通だと思っていた。実際本のおみやげが嬉しくていつも今日はこれ読んでね!ってお父さんにお願いしていた。
でも、幼稚園に入って外の世界を知ると今までの自分の生活が少しヘンだということに気がついた。


「おまえのパパおもちゃ買ってくれないの?ヘンなの~!」って友達に笑われた。
友達と一緒に公園に遊びに行ったら「おもちゃ持ってこないと遊べないよ!」って年上のお兄さんに追い返された。
だから今日は絶対おもちゃを買ってもらおうと思っていたのに・・・お父さんに悪い子って言われると泣きたくなっちゃってそれ以上言えなかった。
友達のように遊びたいけど習い事をサボってお父さんに怒られるのはイヤだった。
遊びたいのに父親の顔色を伺って結局は決められた道を歩んでいる自分がすごくイヤだった。
この思いは小学校中学校と成長していくたびに積み重なっていった。




                                 ~父と息子 碧宮家の場合2へつづく~

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